株式会社ソフトウエア・サイエンス(SSI)

システム刷新で業務フローを見直す方法

はじめに:システム刷新で「今のままでお願いします」が危険な理由

こんにちは。ソフトウエア・サイエンス ビジネスソリューション事業部の守田です。

システムの入れ替え(刷新)プロジェクトの初期段階で、よく耳にする言葉があります。
「新しいシステムになっても、現場が混乱しないように、画面の見た目や業務の手順は『今のまま』で作ってください」
長年慣れ親しんだ仕事のやり方を変えるのは、誰にとってもストレスです。現場からの反発を避けたいという気持ちは、自然なものです。しかし、業務フローを見直さずに、システムだけを新しくすることは、開発コストの増加や、稼働後の不満につながりやすくなります。システム刷新を成功させるには、システムそのものだけでなく、業務の流れそのものを見直す視点が欠かせません。

システム刷新における業務フローの見直しとは、既存業務をそのまま新システムに移すのではなく、現在の業務手順・承認・帳票・確認作業を整理し、残す業務・なくせる業務・システムで代替できる業務を切り分けることです。

この記事では、システム刷新の際に業務フローをどのように見直すべきかを、比喩を交えながら整理します。

この記事で分かること

  • なぜ「現行踏襲」がシステム刷新の失敗につながりやすいのか
  • 業務フロー見直しを進めるうえで重要な考え方
  • 業務のムダを見つけ、システム刷新を成功につなげる視点

この記事はこんな方におすすめです

  • 基幹システムや業務システムの刷新を検討している情報システム部門の担当者
  • 業務改善やDX推進を担う業務部門の責任者・担当者
  • 現行踏襲で進めるべきか、業務フローを見直すべきか判断に迷っている方

SSIでは、業務システムの刷新において、現行業務のヒアリング・可視化から要件定義、システム導入までを一貫して支援しています。「システムを作る前に、業務を整理する」というステップを重視し、お客様と一緒に業務フローの棚卸しから取り組んでいます。

システム刷新で現行踏襲がコスト増につながる理由

システムを新しくすることを、古くなった家の「お引越し」に例えてみましょう。

20年住み続けた家には、今はもう使っていない家具や、いつか使うと思って押し入れにしまい込んだままの荷物がたくさんあるはずです。 そして、新しい家に引っ越すときにそれらを全部そのまま新居に運び込むでしょうか。おそらく、多くの人は「断捨離」をするはずです。 
「この家具は新居の間取りには合わない」「この書類はもう捨てていい」と仕分けをしなければ、せっかくの新しい家もすぐに物で溢れ、住みにくくなってしまいます。 より、大量の不用品を運ぶための引越し費用が余計にかかります。

システムも同じです。

「今のままで作ってほしい(現行踏襲)」というオーダーは、不用品や非効率な配置まで含めて、そのまま新居に持ち込むことに近い考え方です。現代のパッケージシステムやクラウドサービスに、昔の非効率なやり方を無理に当てはめようとすると、膨大なカスタマイズが必要になります。 
その結果、開発費が増え、導入後にも「思ったほど使いやすくない」という不満が残りやすくなります。

現状踏襲で起きやすいこと

  • 不要な業務まで新システムに持ち込んでしまう
  • 標準機能ではなく個別カスタマイズが増える
  • 開発コストや導入期間が膨らみやすくなる
  • 稼働後も現場の不満が残りやすい

現行踏襲が起きやすいのは、大きくわけて3つの領域と考えています。旧システムの画面や操作手順をそのまま再現しようとする「UI踏襲」、紙の帳票や押印フローを残そうとする「紙・押印踏襲」、そして過去の暫定対応や例外処理が正規手順として残り続ける「運用ルール踏襲」です。

業務フロー見直しでは「業務の地層」から不要なルールを掘り起こす

では、具体的に業務フローの見直しはどのように進めればよいのでしょうか。
業務をヒアリングしていると、現場の方に「なぜ、この作業をしているのですか?」と尋ねる場面が何度もあります。

たとえば、システムに入力したデータを、わざわざ紙に印刷してファイルに綴じているという作業があったとします。 理由を聞くと、「昔からそう決まっているから」「念のため」という答えが返ってくることが少なくありません。

さらに過去の経緯を掘り下げていくと、「実は法的な保管義務はなく、15年前の古いシステムの容量が足りなかったから紙で残していただけだった」という事実が見えてくることがあります。 つまり、過去のシステム制約から生まれた苦肉の策が、そのままルールとして残っているのです。

企業の業務フローには、法改正や担当者交代のたびに、こうしたルールが地層のように積み重なっています。 システム刷新は、その地層を掘り起こし、今は不要になったルールや作業を見つけ出す絶好の機会です。

業務フロー見直しで確認したいこと

  • その作業は、今も本当に必要か
  • 法令や監査対応で必要なのか、単なる慣習なのか
  • 過去のシステム制約に引きずられていないか
  • 今のシステムや新しい仕組みで置き換えられないか

業務フローを可視化すると、ムダや二度手間が見つかる

とはいえ、自分たちだけで社内の「当たり前」を疑い、ムダを見つけるのは簡単ではありません。 だからこそ、外部の視点を入れながら、業務を可視化することが重要になります。

業務改善やシステム刷新の場面で重要なのは、単に「何を作るか」を決めることではなく、目に見えない業務を、誰が見ても分かる形にすることです。ヒアリングの際、ホワイトボードに図を書きながら整理することがあります。

「受注データがここに入って、次にAさんが確認して、ここでB部長の承認印をもらって……」

このように業務の流れを線でつなぎ、図として可視化していくと、複雑に絡み合った業務が一気に見えやすくなります。すると、お客様自身が気づかれることがあります。

  • 「ここのチェック工程、二度手間になっていませんか?」
  • 「この帳票、システム上で見られるなら印刷する必要はないですよね」

口頭のやり取りだけでは見つけにくいムダも、図にして初めて浮かび上がります。  このお客様自身の気づきを引き出すことが、業務フロー見直しでは非常に重要です。

可視化すると見つけやすくなるもの

  • 二重チェックや二度手間
  • 役割分担が曖昧な工程
  • 紙や手作業に依存している処理
  • システム上で代替できる帳票や確認作業

私が担当した案件では、業務フローの見直しにあたって、現行の業務の流れを図式化した「業務フロー図」、見直し後の理想像を描く「業務フロー図(To-Be)」、そして各業務について「本当に必要か」「システム化で代替できるか」を一覧で整理する「業務一覧」などの成果物を作成しています。これらを使って、お客様と認識を揃えながら見直しを進めておりました。

システム刷新時の業務見直しは「4つの視点」で整理する

業務の流れが見えてきたら、次は整理です。 見直しの際には、次の4つの視点が有効です。

「念のため」「いつか使うかもしれない」という理由だけで残されている作業は、思い切ってやめる勇気を持つことが重要です。

業務をシステムの標準機能に寄せていくことで、個別カスタマイズを減らしやすくなります。 

その結果、開発コストを抑えやすくなり、導入までの期間も短くなり、現場の作業負担も見直しやすくなります。


システム刷新は、単なる入れ替えではなく「働き方のデザイン」である

システム刷新は、単なるIT機器やソフトウェアの入れ替えではありません。 会社の体質を変え、次の10年を戦うための働き方のデザインそのものです。

古い荷物を手放し、新しい環境に合わせて身軽になること。 その痛みに向き合い、整理整頓をやり遂げた企業こそが、本当に価値のあるシステムを手に入れやすくなります。

SSIでは、お客様に「すべてを変えましょう」と一方的に提案するのではなく、現場の業務を深く理解したうえで、「残すべき業務」と「見直せる業務」を一緒に仕分けするスタンスを大切にしています。稼働後に現場が自走できる業務の形を一緒に設計することが、私たちの考えるシステム刷新支援です。


システム刷新や業務フロー見直しでよくある課題

  • 現行業務をそのまま新システムに持ち込もうとしてしまう
  • 「昔からこうしている」という理由でルールが残っている
  • 可視化してみると二度手間やムダが多い
  • 標準機能でできることまで個別カスタマイズしようとしてしまう

業務フロー見直しでよくある失敗は、現場の要望を十分に確認しないまま効率化だけを優先してしまうことです。不要な作業を減らすことは重要ですが、一見ムダに見える確認作業の中に、監査対応やリスク管理上必要な意味が含まれている場合もあります。

一方で、「監査で必要そう」「念のため残したい」という理由だけで、すべての確認や帳票を残してしまうと、結果として新システムの使い勝手が悪くなり、導入効果が薄れてしまいます。業務見直しでは、なくす作業、残す作業、システムで代替する作業を分けて整理することが重要です。


よくある質問

Q. システム刷新では、現行業務をそのまま再現した方が安全ではないですか?

現場の混乱を抑えるという意味では、その考え方に一定の合理性はあります。 一方で、不要な作業や過去の制約まで持ち込むと、カスタマイズが増え、コストや工期、運用負荷の面でかえって不利になることがあります。

Q. 業務フローはどこから見直せばよいですか?

すべてを標準機能に合わせればよいということではありません。 ただし、現行業務を無条件に残すのではなく、本当に必要な要件と、見直せる業務を分けて考えることが重要です。

Q. 業務フローの見直しは、システム導入前にどこまでやるべきですか?

要件定義に入る前の段階で、現行業務の全体像を可視化し、「なくせる業務」「変えられる業務」「残すべき業務」の仕分け終わらせておくことが理想です。すべてを完璧に整理してからシステム導入に進む必要はありませんが、少なくとも主要な業務フローについてAs-Is(現状)とTo-Be(あるべき姿)の方向性を合意しておくと、要件定義の精度が上がり、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。


まとめ

システム刷新を成功させるには、システムだけを新しくするのではなく、業務フローそのものを見直すことが重要です。

本記事で整理したポイントは次の通りです。

  • 「今のままで」という現行踏襲は、コスト増や使いにくさにつながりやすい
  • 業務フローには、過去の制約から生まれた不要なルールが残っていることがある
  • 業務を可視化することで、ムダや二度手間が見つかりやすくなる
  • 業務見直しは「なくせないか・一緒にできないか・順序を変えられないか・単純にできないか」の4視点で整理できる

システム刷新は、単なる入れ替えではなく、これからの働き方を設計し直す機会でもあります。 だからこそ、現行踏襲で済ませるのではなく、業務フローの見直しまで含めて取り組むことが重要です。

ソフトウエア・サイエンスの開発プロセス

  • システム刷新を進めたいが、現行業務をどこまで見直すべきか分からない
  • 業務フローを整理したいが、どこにムダがあるのか見えていない
  • 現行踏襲で進めてよいのか判断できない
  • 業務整理から要件定義、システム導入まで一貫して相談したい

このような課題をお持ちの場合は、SSIにご相談ください。 業務フローの可視化、見直しの整理、システム刷新に向けた要件整理まで、一貫して支援します。